Tosin Abasiのギター哲学!革新の8弦と超絶技法を徹底解剖
プログレッシブ・メタルやジェント(Djent)と呼ばれるインストゥルメンタル・ミュージックの領域において、エレキギターという楽器の概念そのものを塗り替えてしまった名手がいます。超絶技巧派インストバンドAnimals as Leadersの主宰者にしてフロントマン、トーシン・アバシ(Tosin Abasi)です。
クラシックギターの優美なアルペジオ、ファンク由来のスラップ、そしてメタル特有の激烈な重低音リフを高次元で融合させる彼のスタイルは、世界中のギタリストに強烈な衝撃を与え続けています。自らの理想を具現化するために立ち上げたギターブランド「Abasi Concepts」の動向を含め、彼が放つサウンドの核心と革新的な機材へのこだわりに迫ります。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:人間工学と多弦構造を融合させた自社ブランド「Abasi Concepts」の旗艦機「Larada」がプレイスタイルを進化させた
- 要点2:親指を打楽器のように叩きつける「サムピッキング(Thumping)」と「スラップ奏法」が唯一無二のリズムを生み出す
- 要点3:Fishman製シグネチャーピックアップと最先端のデジタル機材セッティングが驚異的な解像度の重低音を支えている
【原点と軌跡】独学から頂点へ上り詰めたトーシン・アバシの経歴
トーシン・アバシの経歴を紐解くと、最初からエリート街道を歩んできたわけではない意外な事実に突き当たります。1983年にワシントンD.C.で生まれた彼は、友人の家で初めてギターを手にしたティーンエイジャーの頃、ほぼ独学で演奏技術を磨き始めました。ニルヴァーナなどのグランジからスタートした興味は、やがてスティーヴ・ヴァイやイングヴェイ・マルムスティーンといったテクニカルギタリストへと急速にシフトしていきます。
その後、名門アトランタ・インスティテュート・オブ・ミュージック(AIM)でクラシックギターやジャズ理論を本格的に学んだ経験が、彼の音楽的バックボーンを決定づけました。メタルコアバンド「Reflux」での活動を経て、2007年にレコード会社からソロプロジェクトのオファーを受けたことが、Animals as Leaders結成の決定的な契機となります。7弦、そして8弦ギターという未知の領域へ踏み込んだ彼は、単なる速弾きにとどまらない、新世代のギターインストゥルメンタルを世界に提示しました。
【ギターの秘密】Abasi Conceptsと旗艦モデル「Larada 8弦ギター」の革新性
多くのファンやギタリストが抱く最大の疑問が、「なぜトーシン・アバシはあの独特な形状のギターに行き着いたのか」という点です。その答えを具現化した結晶こそ、彼自身が立ち上げたブランドAbasi Conceptsであり、その中核を担うLarada 8弦ギターです。
Laradaのボディシェイプは、奇抜さを狙ったものではなく徹底した人間工学(エルゴノミクス)の産物です。8弦ギターはネックが極端に幅広く、通常のギターシェイプではハイポジションでの手首の角度に過度な負担がかかります。Laradaはオフセットされたティアドロップ型の非対称ボディと深いカッタウェイを採用することで、座奏・立奏の双方において完璧なバランスを維持できるように設計されています。
さらに見逃せないのが、フレットが扇状に広がる「マルチスケール(ファンフレット)」の採用です。低音弦側を長く(約27.5インチ)、高音弦側を標準的(約25.5インチ)に保つ構造により、重低音弦の適切なテンション感を確保しつつ、高音弦でのスムーズなチョーキングと滑らかなフィンガリングを両立しています。彼が繰り出す複雑怪奇なボイシングは、この楽器構造の最適化があって初めて成立する表現なのです。
【名器の変遷】Ibanez TAM100から自社ブランド設立に至るシグネチャーモデルの歴史
Abasi Conceptsを創設する前、トーシン・アバシの快進撃を世界基準で支えていたのが、日本の老舗ギターメーカーIbanez(アイバニーズ)でした。その象徴とも言える名機が、2013年に登場したシグネチャーモデルIbanez TAM100です。
当時としては極めて先進的だった8弦仕様のTAM100は、強固なウェンジ/バブリンガの極薄ネックに、キルテッドメイプルトップとバスウッドバックを組み合わせた仕様でした。Ibanezの高いビルドクオリティは、過酷なワールドツアーを戦い抜く信頼性を彼に提供し、多弦ギターがヘヴィロックのニッチな道具からメインストリームの楽器へと押し上げられる起爆剤となりました。
しかし、理想のトーンと演奏性への探求心は既存の枠組みに収まりませんでした。より自由度の高い木材選定、革新的なボディバランシング、そして自身の手の動きに極限まで寄り添うネックプロファイルを求め、数多くのカスタムビルダーとの協業を経て、最終的に自らメーカーを立ち上げる道を選んだのです。
【超絶技巧】スラップ奏法とサムピッキングが切り拓いた新次元のギタープレイ
トーシン・アバシの代名詞としてギターコミュニティを震撼させ続けているのが、ベース由来の手法を独自の形で再構築したスラップ奏法とサムピッキング(Thumping)です。
彼が開発したサムピッキングは、親指をピックのように使い、弦を振り抜いて(Down)すぐに跳ね上げる(Up)動作を素早く連続させる奏法です。これに人差し指や中指のプル(引っ張り)、さらには左手のハンマリング/プリングを組み合わせることで、まるでドラムのルーディメンツのような変則ポリリズムをギター1本で叩き出します。
従来のギタリストが「音階を弾く」という発想に囚われていたのに対し、彼はギターを「音程を持った打楽器」として再定義しました。Animals as Leadersの代表曲「Physical Education」や「The Woven Web」で聴くことができるパーカッシブなリフは、正確無比なサムピッキングなしには演奏不可能です。指先とピックを柔軟に使い分けるハイブリッドピッキングとの融合が、彼の音楽に唯一無二の立体感を与えています。
【音作りの深淵】フィッシュマンピックアップと最新エフェクターボード・機材セッティング
8弦ギターの極低音からクリスタルのように澄んだクリーントーンまで、一切の濁りなく出力するために、トーシン・アバシの足元とアンプセクションには最先端のテクノロジーが投入されています。
サウンドの心臓部を担うのが、彼のために専用チューニングされたフィッシュマンピックアップ(Fishman Fluence Tosin Abasi Custom Voicing)です。従来のコイル巻きピックアップと異なり、複数の基板を重ね合わせることでノイズを極小化しつつ、瞬時に3つの異なるボイシングを切り替えられる構造を持っています。ヘヴィでタイトな歪み専用ボイス、コイルタップによる歯切れの良いシングルコイル風サウンド、そしてピエゾを思わせるアコースティックライクなトーンが一瞬で手に入ります。
アンプとエフェクターボード周りの機材セッティングにおいては、徹底したデジタルプロファイリング環境を構築しています。Neural DSPの「Quad Cortex」やFractal Audioの「Axe-Fx」シリーズを中核に据え、複雑なテンポチェンジや音色切り替えをMIDIで完全自動化。低音リフ用には余分な超低域をカットして明瞭度を上げるイコライジングを施し、クリーンパートには微細なコンプレッサーと深い空間系リバーブを重ねることで、スタジオクオリティの重厚な音響空間をライブの現場で再現しています。
【音域の拡張】重低音と美しい和音を両立するトーシン・アバシのチューニング設定
トーシン・アバシが駆使する8弦ギターの魅力を理解する上で欠かせないのが、極めて合理的なチューニング設定です。彼が頻繁に用いる基本セットアップは以下の2種類に大別されます。
- 8弦スタンダードチューニング:1弦から順に「E - B - G - D - A - E - B - F#」
- 8弦ドロップEチューニング:最低音の8弦を全音下げて「E」に設定し、「E - B - G - D - A - E - B - E」
特に多用される「ドロップE」セッティングでは、8弦が一般的な4弦ベースの最低音と同じE音に達します。このチューニングの最大の利点は、オクターブ違いのE音(8弦と6弦)をワンフィンガーで同時に押さえられる点にあります。ベース帯域のド迫力のリフを刻みながら、高音弦でジャズ由来のテンションコード(9thや11th、13th)を重ねることで、ピアノの右手と左手を同時に演奏するような広大なコードボイシングを実現しているのです。
【tosin abasi ギター】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:トーシン・アバシのギター「Larada」は日本国内でも購入できますか?
A1:はい、一部の正規代理店や大手楽器店がスポット入荷の形で取り扱っています。ただし、Abasi Conceptsはアメリカ国内の厳格な工房でハンドメイドに近い工程で生産されているため流通数が極めて少なく、オーダー開始直後に即完売するケースが多いため、正規代理店の最新入荷情報を常にチェックすることをおすすめします。
Q2:8弦ギター初心者でもトーシン・アバシのようなサムピッキングは習得できますか?
A2:非常に難易度が高い奏法ですが、順を追って練習すれば習得可能です。まずは6弦ギターやベースを用いて親指のダウン&アップの均一なストロークを身につけ、その後プルを交えたコンビネーションへ移行するのが近道です。弦同士の間隔やテンションに慣れる必要があるため、メトロノームを用いたスローテンポでの反復練習が欠かせません。
Q3:トーシン・アバシのシグネチャーモデルには7弦や6弦のラインナップもありますか?
A3:存在します。Abasi Conceptsの「Larada」シリーズには、象徴的な8弦モデルだけでなく、7弦仕様や6弦仕様のモデルもラインナップされています。基本となる人間工学に基づいたティアドロップデザインやマルチスケールフレットは継承されており、多弦に不慣れなギタリストでもその極上の演奏性を体感できます。
まとめ:次世代ギターの未来を照らし続けるトーシン・アバシの探求
トーシン・アバシという表現者の足跡を辿ると、彼が単なる技巧派ギタリストの枠組みに留まらず、エレキギターという文化そのものを前進させるイノベーターであることが明白になります。
伝統的なギターの常識に縛られることなく、必要とあらば楽器の構造を自らゼロから設計し、新たな演奏技法を考案し、最先端のエレクトロニクスを味方につける姿勢。その妥協なき探求が生み出す音楽は、これからもジャンルの境界線を軽やかに飛び越え、世界中のプレイヤーに尽きないインスピレーションを与え続けていくはずです。 (出典: tosin abasi ギター(Yahoo!ニュース))