線形写像の例題攻略法!表現行列と核・像の次元計算を徹底解説
大学の数学で多くの学生が最初の大きな壁として直面するのが、線形代数学における「線形写像」の単元です。高校までの計算中心の数学から一転し、抽象的な線形空間(ベクトル空間)や基底の概念が絡み合うことで、「教科書の定義は読めたのに、いざ定期試験や大学院入試の例題を前にすると手が止まってしまう」という悩みが後を絶ちません。
2026年現在の大学カリキュラムや大学院入試(院試)の出題傾向を分析すると、単なる行列計算の枠を超え、「空間の構造を把握した上で、表現行列や核(Ker)・像(Im)を論理的に導出できるか」を問う記述問題が主流となっています。本稿では、線形写像の基本性質から表現行列の求め方、KerとImの次元計算、次元定理の適用、基底変換まで、試験で確実に得点するための解法パターンを網羅的かつ実践的に解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:線形写像の例題で失点する最大の原因は「基底の送り先を行列の列ベクトルに並べる」という表現行列の基本構造の混同にある。
- 要点2:核(Ker)は同次連立一次方程式の解空間、像(Im)は表現行列の列ベクトルが張る空間として統一的に処理できる。
- 要点3:次元定理($\dim V = \dim \operatorname{Ker} f + \dim \operatorname{Im} f$)を活用することで、計算結果の検算や全射・単射の判定を即座に行える。
【期末・院試対策】線形写像の例題でつまずく決定的な原因と突破口
大手予備校や学内の学習支援センターに寄せられる相談データを検証すると、線形代数の期末試験対策や院試の過去問演習において、学生がつまずくポイントには明確な共通点が存在します。それは「定義式の抽象記号」と「具体的な行列変形の手続き」の間にある論理の架け橋を見失ってしまう点です。
多くの学習者が「$f(ax + by) = af(x) + bf(y)$ という定義は覚えたが、基底が与えられたときに何をどう立式すればよいか分からない」という状態に陥ります。このギャップを埋める突破口は、すべての問題を以下の3つのステップに還元して捉えることにあります。
- ステップ1(基底の行き先を追う):定義域の空間の基底を、写像 $f$ で移した先のベクトルを計算する。
- ステップ2(目標空間の基底で展開する):移されたベクトルを、終域の空間の基底の線形結合(一次結合)で表す。
- ステップ3(係数を縦に並べる):得られた係数を列ベクトルとして左から順に並べ、表現行列を構成する。
この一連の流れさえ身につければ、数ベクトル空間 $\mathbb{R}^n$ はもちろん、多項式空間 $P_n(\mathbb{R})$ や行列空間 $M_m(\mathbb{R})$ を扱う高度な応用例題でも迷うことはありません。

【基本例題で理解】線形写像の定義と線形独立・従属の判定テクニック
まずはすべての土台となる「線形写像の定義と性質」、そして「線形独立(一次独立)と線形従属(一次従属)」の判定法を例題で確認します。
線形写像の定義と判定例題
写像 $f: V \to W$ が線形写像(線形変換)であるための必要十分条件は、任意のベクトル $u, v \in V$ と任意のスカラー $c, d$ に対し、次の線形性(加法性と斉次性)が成り立つことです。
$$f(cu + dv) = c f(u) + d f(v)$$
【例題1:線形写像の判定】
写像 $f: \mathbb{R}^2 \to \mathbb{R}^2$ が $f\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2x + 3y \\ x - y \end{pmatrix}$ で定義されるとき、$f$ が線形写像であることを示せ。
【解答手順】
任意の実数 $c_1, c_2$ およびベクトル $u = \begin{pmatrix} x_1 \\ y_1 \end{pmatrix}, v = \begin{pmatrix} x_2 \\ y_2 \end{pmatrix} \in \mathbb{R}^2$ を取ります。
線形結合 $c_1 u + c_2 v = \begin{pmatrix} c_1 x_1 + c_2 x_2 \\ c_1 y_1 + c_2 y_2 \end{pmatrix}$ に対し、写像 $f$ を適用します。
$$f(c_1 u + c_2 v) = \begin{pmatrix} 2(c_1 x_1 + c_2 x_2) + 3(c_1 y_1 + c_2 y_2) \\ (c_1 x_1 + c_2 x_2) - (c_1 y_1 + c_2 y_2) \end{pmatrix}$$
これを定数 $c_1, c_2$ について整理すると、
$$= c_1 \begin{pmatrix} 2x_1 + 3y_1 \\ x_1 - y_1 \end{pmatrix} + c_2 \begin{pmatrix} 2x_2 + 3y_2 \\ x_2 - y_2 \end{pmatrix} = c_1 f(u) + c_2 f(v)$$
となり、線形性の条件を満たすため、$f$ は線形写像であることが証明されました。
線形独立と線形従属の判定
ベクトル群 $\{v_1, v_2, \dots, v_k\}$ に対し、$c_1 v_1 + c_2 v_2 + \dots + c_k v_k = 0$ を満たすスカラーが $c_1 = c_2 = \dots = c_k = 0$ に限られるとき、これらは線形独立と呼ばれます。これを行列表示した際、ベクトルを並べた行列の階数(ランク)が $k$ に一致するかどうかで行列式や基本変形を用いて素早く判定します。
【頻出パターン別】表現行列の求め方と基底の変換行列をステップ解説
試験で最も配点が高く、計算ミスが多発するのが「表現行列の導出」と「基底の変換行列」を用いた基底変換です。
多項式空間における表現行列の導出
【例題2:多項式空間の線形写像と表現行列】
実数係数の2次以下の多項式全体のなす線形空間を $P_2(\mathbb{R})$ とする。写像 $f: P_2(\mathbb{R}) \to P_2(\mathbb{R})$ を $f(p(x)) = p'(x) + p(x)$($p'(x)$ は導関数)で定義する。基底 $\{1, x, x^2\}$ に関する $f$ の表現行列 $A$ を求めよ。
【解答ステップ】
基底の各要素 $e_1 = 1, e_2 = x, e_3 = x^2$ の行き先を個別に計算します。
- $f(1) = (1)' + 1 = 1 = 1 \cdot 1 + 0 \cdot x + 0 \cdot x^2$
- $f(x) = (x)' + x = 1 + x = 1 \cdot 1 + 1 \cdot x + 0 \cdot x^2$
- $f(x^2) = (x^2)' + x^2 = 2x + x^2 = 0 \cdot 1 + 2 \cdot x + 1 \cdot x^2$
基底 $\{1, x, x^2\}$ の係数を「縦(列ベクトル)」に並べることで、求める表現行列 $A$ が完成します。
$$A = \begin{pmatrix} 1 & 1 & 0 \\ 0 & 1 & 2 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}$$
基底の変換行列と線形写像の合成
空間 $V$ の基底を $\{v_1, \dots, v_n\}$ から $\{v'_1, \dots, v'_n\}$ へ変換する行列を $P$、空間 $W$ の基底を $\{w_1, \dots, w_m\}$ から $\{w'_1, \dots, w'_m\}$ へ変換する行列を $Q$ とするとき、新しい基底に関する表現行列 $B$ は次の関係式で与えられます。
$$B = Q^{-1} A P$$
また、2つの線形写像 $f: U \to V$(表現行列 $A$)と $g: V \to W$(表現行列 $B$)の合成写像 $g \circ f: U \to W$ の表現行列は、行列の積 $BA$ と一致します。この代数的対応関係を理解しておくことが、院試の抽象論述問題を解く鍵となります。

【完全攻略】核(Ker)と像(Im)の計算手順と次元定理の活用法
線形写像の性質を調べる上で中心となるのが、核(カーネル / $\operatorname{Ker} f$)と像(イメージ / $\operatorname{Im} f$)の計算です。これらはそれぞれ定義域の部分空間、終域の部分空間を構成します。
| 概念 | 数学的定義 | 解法の実践的アプローチ | 写像の幾何的性質との関係 |
|---|---|---|---|
| 核($\operatorname{Ker} f$) | $\{x \in V \mid f(x) = 0\}$ | 同次連立方程式 $Ax = 0$ の解空間の基底を求める | $\operatorname{Ker} f = \{0\} \iff$ 単射 |
| 像($\operatorname{Im} f$) | $\{f(x) \mid x \in V\}$ | $A$ を行基本変形し、主成分(ピボット)のある元の列を選ぶ | $\operatorname{Im} f = W \iff$ 全射 |
| 次元定理 | $\dim V = \dim \operatorname{Ker} f + \dim \operatorname{Im} f$ | 未知の次元の算出および計算ミスの検算に利用 | 自由度と拘束条件の保存則を表す |
【例題3:KerとImの基底と次元の決定】
線形写像 $f: \mathbb{R}^4 \to \mathbb{R}^3$ が行列 $A = \begin{pmatrix} 1 & 2 & 0 & 1 \\ 2 & 4 & 1 & 4 \\ 1 & 2 & 1 & 3 \end{pmatrix}$ によって $f(x) = Ax$ と定義されている。$\operatorname{Ker} f$ および $\operatorname{Im} f$ の基底と次元を求めよ。
【解答手順】
1. 行列 $A$ の行基本変形:
第2行から第1行の2倍を引き、第3行から第1行を引きます。さらに変形を進めると簡約化行列が得られます。
$$A \longrightarrow \begin{pmatrix} 1 & 2 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 1 & 2 \\ 0 & 0 & 1 & 2 \end{pmatrix} \longrightarrow \begin{pmatrix} 1 & 2 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 1 & 2 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{pmatrix}$$
2. 像 $\operatorname{Im} f$ の基底と次元:
簡約化行列において主成分(ピボット)が存在するのは第1列と第3列です。したがって、像の次元は $\dim \operatorname{Im} f = \operatorname{rank}(A) = 2$ となります。
基底は元の行列 $A$ の第1列と第3列を採用します。
$$\operatorname{Im} f \text{ の基底} = \left\{ \begin{pmatrix} 1 \\ 2 \\ 1 \end{pmatrix}, \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ 1 \end{pmatrix} \right\}$$
3. 核 $\operatorname{Ker} f$ の基底と次元:
$Ax = 0$ は次の方程式と同値です。
$$\begin{cases} x_1 + 2x_2 + x_4 = 0 \\ x_3 + 2x_4 = 0 \end{cases}$$
自由変数として $x_2 = s, x_4 = t$ と置くと、$x_1 = -2s - t, x_3 = -2t$ と表せます。ベクトル $x$ は次のように分解できます。
$$x = \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \\ x_4 \end{pmatrix} = s \begin{pmatrix} -2 \\ 1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix} + t \begin{pmatrix} -1 \\ 0 \\ -2 \\ 1 \end{pmatrix}$$
したがって、$\dim \operatorname{Ker} f = 2$ であり、基底は以下となります。
$$\operatorname{Ker} f \text{ の基底} = \left\{ \begin{pmatrix} -2 \\ 1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}, \begin{pmatrix} -1 \\ 0 \\ -2 \\ 1 \end{pmatrix} \right\}$$
4. 次元定理による検算:
定義域の次元 $\dim \mathbb{R}^4 = 4$ に対し、$\dim \operatorname{Ker} f + \dim \operatorname{Im} f = 2 + 2 = 4$ が成り立ち、計算が正確であることが確認できます。
【実態検証】学習者の生の声と現場目線で見えたリアル
知恵袋やSNS、理工系コミュニティに投稿されたリアルな声を分析すると、線形代数の試験において多くの学生が「計算そのもの」ではなく「答案の記述作法」で減点されている実態が浮き彫りになります。
「Imの基底を答える問題で、基本変形した後の行ベクトルの組を書いてしまい大幅に減点された」(工学部2年生・期末試験後の投稿)
「Kerの計算で連立方程式を解くところまでは合っていたが、基底の形式(ベクトルの集合)として明記しなかったため部分点しかもらえなかった」(大学院受験生・模試の反省録)
現場の採点基準では、「$\operatorname{Im} f$ の基底は基本変形後の列ではなく、必ず変形前の元の行列の列ベクトルから選ぶこと」が厳格に求められます。基本変形によって列ベクトルの張る空間自体は変化してしまうため、変形後の列をそのまま答えると数学的に誤りとなる点に細心の注意を払わなければなりません。

一般に知られていない盲点とネットの誤解
ネット上の簡易解説サイトなどでは、「全単射=正則行列だから逆行列を計算すれば終わり」といった表面的な説明が散見されます。しかし、ここには重大な盲点が存在します。
「定義域と終域の次元が異なる場合」の誤解
定義域 $V$ と終域 $W$ の次元が異なる場合(例えば $f: \mathbb{R}^3 \to \mathbb{R}^2$ など)、表現行列は正方行列になりません。したがって、行列式を用いた正則性の判定や逆行列の計算は原理的に不可能です。
- $\dim V > \dim W$ の場合:次元定理より $\dim \operatorname{Ker} f \ge \dim V - \dim W > 0$ となるため、決して単射にはなり得ません。
- $\dim V < \dim W$ の場合:$\dim \operatorname{Im} f \le \dim V < \dim W$ となるため、決して全射にはなり得ません。
このような空間の「次元の不等式」から直ちに導かれる性質を理解しておくと、無駄な計算を省き、記述問題でスマートかつ説得力のある解答を作成できます。
【プロの結論】おすすめできる学習法・慎重になるべき学習法の判断基準
線形写像のマスターにおいて、推奨されるアプローチは「具体的な数ベクトル空間の例題を手計算で解いた直後に、多項式空間などの抽象空間の例題に同一のアルゴリズムを適用してみる」ことです。具象と抽象を往復することで、写像の本質が身体化されます。
一方で避けるべき学習法は、「行基本変形のアルゴリズムだけを機械的に暗記すること」です。基底の順序が入れ替わった際や、内積が定義された計量線形空間(正規直交基底)の論点が登場した途端に破綻するため、必ず「基底の変換公式の導出原理」に立ち返る習慣をつけてください。
【線形写像の例題】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:表現行列を構成するとき、なぜ係数を「行」ではなく「列(縦)」に並べるのですか?
A1:ベクトルの座標を縦ベクトル(列ベクトル)として表記する規約に基づいているためです。基底ベクトル $v_j$ の像 $f(v_j) = \sum_{i=1}^m a_{ij} w_i$ に対し、行列と列ベクトルの積 $A \begin{pmatrix} 0 \\ \vdots \\ 1 \\ \vdots \\ 0 \end{pmatrix}$ を計算した際、正しく第 $j$ 列の係数 $(a_{1j}, a_{2j}, \dots, a_{mj})^T$ が出力されるよう設計されているからです。
Q2:$\operatorname{Ker} f = \{0\}$ であることと「単射」が同値になるのはなぜですか?
A2:線形性により、$f(u) = f(v) \iff f(u - v) = 0 \iff u - v \in \operatorname{Ker} f$ が成り立ちます。もし $\operatorname{Ker} f = \{0\}$ であれば、$u - v = 0$ すなわち $u = v$ となり、単射の定義を満たします。逆に単射であれば、$f(0) = 0$ より $0$ 以外の元が $0$ に移ることはないため、$\operatorname{Ker} f = \{0\}$ となります。
Q3:院試対策として線形写像の過去問演習を始める適切なタイミングはいつですか?
A3:行列の階数(ランク)、逆行列、行列式、連立一次方程式の解法を一通り習得した直後が最適です。線形写像はこれらすべての知識を統合する単元であるため、線形写像の例題を解くこと自体が前半分野の総復習としても極めて効果的に機能します。
まとめ:線形代数を武器にするための学習ロードマップ
線形写像は、一見すると抽象的で難解に見えますが、その実態は「基底の行き先を行列として符号化し、連立一次方程式の理論に帰着させて空間を分析する道具」に他なりません。
期末試験や大学院入試を突破するためには、以下のロードマップに沿って演習を重ねることが確実な近道です。
- 基本変形の徹底:同次方程式の解空間(Ker)とピボット列(Im)の導出を素早く正確に行えるようにする。
- 表現行列の定着:標準基底だけでなく、多項式空間や一般基底における立式ステップを身につける。
- 次元定理の体得:全射・単射の判定や検算を瞬時に行える論理的思考力を養う。
確固たる基礎計算力と空間構造への理解を両立させ、線形写像の例題を得点源へと変えていきましょう。 (出典: 線形 写像 例題(Yahoo!ニュース))