兼好法師が詞のあげつらひ品詞分解|現代語訳と文法を徹底解説
高校の古典の授業や定期テストで頻出する『古今著聞集』の一節「兼好法師が詞のあげつらひ」。『徒然草』の著者として広く知られる吉田兼好(卜部兼好)の鋭い観察眼と言語感覚が鮮やかに描かれた説話です。
短い文章の中に、助動詞の識別や係り結びの法則、敬語の用法など、大学入試や定期テストで問われる重要文法のエッセンスが凝縮されています。本文の完全品詞分解をはじめ、助動詞の活用、現代語訳、読解で差がつくポイントを分かりやすく整理して解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:本文の全単語を品詞分解し、助動詞の接続・活用形や「ぞ〜連体形」の係り結びの法則を完全網羅。
- 要点2:重要古語「あげつらひ」の意味や、兼好法師と「ある人」の美意識の違いをわかりやすい現代語訳で対比。
- 要点3:定期テストや共通テスト対策に直結する文法識別問題(「たる」「る」「なり」)と敬語の敬意の方向を徹底解説。
【教科書本文あらすじ】「兼好法師が詞のあげつらひ」の全体像と背景
『古今著聞集』(ここんちょもんじゅう)は、鎌倉時代中期に橘成季(たちばなのなりすえ)によって編纂された全20巻からなる世俗説話集です。「兼好法師が詞のあげつらひ」は、草木にまつわる説話を集めた巻第十五(草木部)に収められています。
タイトルの「あげつらひ(あげつらい)」は、動詞「あげつらふ」の名詞形で、「物事の可否や理非を論じること」「言葉の揚げ足を取ること」「批評・論難」を意味します。
物語のあらすじは明快です。ある人が「散った紅梅は、桜よりも風情があって素晴らしい」と風流を気取って述べたのに対し、居合わせた吉田兼好が「それは紅梅が散る姿が桜に似ているから愛でているにすぎない。紅梅本来の魅力は散らずに残っている姿にある」と、相手の言葉の矛盾を鋭く指摘(あげつらひ)したというエピソードです。
【完全対訳】「兼好法師が詞のあげつらひ」の現代語訳と重要古語解説
まずは本文の全体像を掴むため、原文と現代語訳を対照して確認しましょう。
【原文】
ある人のいはく、「紅梅のちりたるは、桜にまさりてあはれなり」と申し侍りしかば、兼好法師がいはく、「それは、紅梅のちりたるが桜に似たるを愛するなり。紅梅はちり残れるぞよき」と、詞のあげつらひをし侍りき。
【現代語訳】
ある人が言うことには、「紅梅の散った風情は、桜に勝ってしみじみとした趣がある」と申し上げましたところ、兼好法師が言うことには、「それは、紅梅が散った様子が桜に似ているのを好んでいるのである。紅梅は散らずに残っている姿こそが良いのだ」と、言葉の論評をいたしました。
【読解に必須の重要古語解説】
- いはく(言はく):「言うことには」の意。動詞「いふ」の未然形に接尾語「く」が付いて名詞化したク語法。
- あはれなり:しみじみとした趣がある、風情がある。中世古典における中心的な美意識を表す重要形容動詞。
- まさる(勝る・優る):〜より優れている、〜を上回る。比較の基準を表す格助詞「に」を伴う。
- 愛す(あいす):好む、賞美する、めでる。サ行変格活用動詞。
- あげつらひ(論ひ):議論すること、批評・論難すること。言葉の不備や論理の矛盾を突き詰めるニュアンスを含みます。
【徹底品詞分解】本文の助動詞・用言・助詞を1文ずつ完全解読
定期テストや記述対策で最も狙われる本文の品詞分解を、文ごとに細かく分解して解説します。
第1文:ある人のいはく、「紅梅のちりたるは、桜にまさりてあはれなり」と申し侍りしかば、
【品詞分解】
- ある:連体詞
- 人:名詞
- の:格助詞(主格「〜が」)
- いはく:名詞(動詞「いふ」未然形+接尾語「く」)
- 「:記号
- 紅梅:名詞
- の:格助詞(主格「〜が」)
- ちり:ラ行四段動詞「ちる」連用形
- たる:存続・完了の助動詞「たり」連体形
- は:係助詞
- 桜:名詞
- に:格助詞(比較の基準「〜より」)
- まさり:ラ行四段動詞「まさる」連用形
- て:接続助詞(単純接続)
- あはれなり:形容動詞(ナリ活用)終止形
- 」:記号
- と:格助詞(引用「〜と」)
- 申し:サ行四段動詞「まうす(申す)」連用形(謙譲語)
- 侍り:ラ行変格補助動詞「はべり」連用形(丁寧語)
- しか:過去の助動詞「き」已然形
- ば:接続助詞(順接確定条件・原因理由「〜ので / 〜ところ」)
第2文:兼好法師がいはく、「それは、紅梅のちりたるが桜に似たるを愛するなり。
【品詞分解】
- 兼好法師:固有名詞
- が:格助詞(主格「〜が」)
- いはく:名詞(動詞「いふ」未然形+接尾語「く」)
- 「:記号
- それ:指示代名詞
- は:係助詞
- 紅梅:名詞
- の:格助詞(主格「〜が」)
- ちり:ラ行四段動詞「ちる」連用形
- たる:存続・完了の助動詞「たり」連体形
- が:格助詞(連体修飾格または同格「〜の」)
- 桜:名詞
- に:格助詞(対象「〜に」)
- 似:ナ行上一段動詞「にる」連用形
- たる:存続・完了の助動詞「たり」連体形
- を:格助詞(対象「〜を」)
- 愛する:サ行変格動詞「愛す」連体形
- なり:断定の助動詞「なり」終止形
- 。:記号
第3文:紅梅はちり残れるぞよき」と、詞のあげつらひをし侍りき。
【品詞分解】
- 紅梅:名詞
- は:係助詞
- ちり残れ:ラ行四段動詞「ちりのこる」已然形
- る:存続・完了の助動詞「り」連体形
- ぞ:係助詞(強調)
- よき:形容詞(ク活用)連体形(※「ぞ」の結び)
- 」:記号
- と:格助詞(引用「〜と」)
- 詞:名詞
- の:格助詞(連体修飾格「〜の」)
- あげつらひ:名詞(動詞「あげつらふ」連用形の名詞化)
- を:格助詞(対象「〜を」)
- し:サ行変格動詞「す」連用形
- 侍り:ラ行変格補助動詞「はべり」連用形(丁寧語)
- き:過去の助動詞「き」終止形
- 。:記号
【文法識別と重要公式】助動詞の活用・係り結び・敬語の本質
定期テストの文法識別問題で頻出する3大ポイントを深掘りします。
1. 存続・完了の助動詞「たり」と「り」の識別公式
本文には完了・存続の助動詞が複数登場しますが、接続ルールを覚えることで瞬時に見分けられます。
- 「ちりたる」「似たる」の「たる」:連用形接続の助動詞「たり」の連体形。
- 「ちり残れる」の「る」:サ変未然形・四段已然形に接続する助動詞「り」(いわゆる「サ未四已=さみしい」の公式)の連体形。動詞「ちりのこる」(四段活用)の已然形「ちりのこれ」に接続しています。
2. 係り結びの法則(ぞ → 連体形)
「紅梅はちり残れるぞよき」において、係助詞「ぞ」を受けて文末の形容詞「よし」が終止形(よし)ではなく連体形(よき)へと変化しています。「散り残っている状態こそが本当に素晴らしいのだ」と主張を強く強調する役割を果たしています。
3. 敬語の種類と敬意の方向
会話文の内外で用いられている敬語の構造を整理しておくことが不可欠です。
- 申し(まうす):謙譲語(本動詞)。話者(ある人)から聞き手への敬意。
- 侍り(はべり):丁寧語(補助動詞)。地の文において、筆者(橘成季)から読者に対する敬意を示します。
【定期テスト古文対策】出題パターンと記述で差がつく古典読解ポイント
定期テストで高得点を獲得するために押さえておくべき読解の視点と、予想される設問パターンを整理しました。
【兼好法師の美意識と論理の核心】
ある人は「桜」を引き合いに出し、散り際のはかなさを紅梅に重ねて「紅梅の散る風情は桜以上だ」と褒めたつもりでした。しかし兼好法師は、その発言の欺瞞(ぎまん)を即座に見抜きます。「それは紅梅そのものの良さではなく、桜の散る姿を紅梅に重ねて喜んでいるだけだ」と喝破し、「それぞれの花が持つ本来の個性(紅梅なら散らずに咲き残っている姿)を正しく愛でるべきだ」と主張したのです。
【頻出テスト設問パターン】
- 記述問題1:兼好法師が「それは紅梅のちりたるが桜に似たるを愛するなり」と述べた理由を現代語で説明せよ。
→ 解答の要点:相手が紅梅自体の美しさではなく、桜の散る風情に似ているという二次的な要素を褒めているにすぎないと見抜いたから。 - 文法識別問題2:「ちり残れる」の「る」の文法的意味と基本形を答えよ。
→ 解答:存続(または完了)の助動詞「り」の連体形。 - 心情・人物像問題3:この逸話から読み取れる兼好法師の性格や態度はどのようなものか。
→ 解答の要点:物事の本質を鋭く見抜き、風流を気取った中途半端な言動に対して妥協せず論理的に批判する厳しい姿勢。
【兼好法師が詞のあげつらひ品詞分解】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「詞のあげつらひ」とはどういう意味ですか?
A1:相手の言葉の論理的な矛盾や不備を取り上げて、細かく論評・批評することです。現代の「言葉の揚げ足を取る」に近い意味合いも含みますが、ここでは兼好法師の卓越した言語感覚と美意識の鋭さを示す表現として使われています。
Q2:「ちり残れるぞよき」の文法的な注意点は何ですか?
A2:2点あります。1点目は「ちり残れ(四段已然形)」に接続する「る」が存続の助動詞「り」の連体形である点。2点目は、係助詞「ぞ」による係り結びの法則が働き、文末の形容詞「よし」が連体形の「よき」になっている点です。
Q3:なぜ兼好法師は「紅梅はちり残れるぞよき」と主張したのですか?
A3:桜の美しさが「一斉に散るはかなさ」にあるのに対し、梅(紅梅)の美しさは寒さの中で「散らずに枝に咲き残っている力強さ・風情」にあるという、花ごとの本質的な美意識を重んじたためです。
まとめ:文法理解と美意識の読解で古文の得点力を磐石に
『古今著聞集』の「兼好法師が詞のあげつらひ」は、一見すると短いエピソードですが、助動詞の接続(「たり」と「り」の識別)、係り結びの法則、敬語の識別といった古典文法の重要要素が隙間なく詰まっています。
単語ごとの品詞分解を完璧にマスターし、兼好法師が展開した「桜と紅梅の美意識の対比」という論理の軸を把握しておくことで、定期テストはもちろん、模試や入試の記述問題でも確実に得点源にできます。各文の助動詞の活用形と意味を繰り返し確認し、確固たる古典読解力を身につけましょう。 (出典: 兼好 法師 が 詞 の あげつら ひ 品詞 分解(Yahoo!ニュース))