【2026年最新】地絡電流の計算式を完全解説!B種接地と高圧電路の基準
高圧受電設備を運用・管理する現場や電験(電気主任技術者試験)の学習において、多くの技術者が頭を悩ませるのが「地絡電流の算出」です。電気設備の安全を守る接地工事や保護協調の整定を行う際、地絡電流を正確に把握することは避けて通れません。しかし、理論式と法令上の実務計算式の違い、対地静電容量の算出方法、遮断器の動作時間に応じた接地抵抗値の決定基準など、考慮すべき要素は多岐にわたります。
2026年の最新保安基準においても、設備の高経年化や高圧ケーブル採用区間の増加に伴い、地絡時の対地静電容量の正確な把握と適切な保護装置の協調が強く求められています。本記事では、非接地系統における地絡電流の基礎理論から、電気設備技術基準の解釈に基づく実務計算、零相変流器(ZCT)や地絡方向継電器(DGR)の整定手順までを体系的にわかりやすく解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:非接地系統の地絡電流は電路の「対地静電容量」によって決まり、理論式は $I_g = \sqrt{3}\omega C V$(線間電圧基準)で算出される。
- 要点2:B種接地抵抗値の計算は「電気設備技術基準の解釈」に基づき、地絡遮断器の遮断時間(1秒以内/2秒以内/制限なし)と地絡電流の実測・計算値から規定される。
- 要点3:高圧ケーブルの長大化に伴い対地静電容量が増加するため、もらい事故を防ぐDGRの位相特性やZCTの適切な整定値設定が実務上不可欠である。
【基礎知識】非接地系統における地絡事故のメカニズムと1線地絡電流の計算式
日本の配電系統や自家用高圧受電設備(6.6kV系統)では、一般的に中性点を接地しない非接地系統が採用されています。非接地系統で1線地絡事故が発生した際、短絡事故のような大電流が流れるわけではありません。回路を形成するのは、電路と大地との間に存在する「対地静電容量(浮遊容量)」を介した微小な充電電流です。
電験三種 地絡電流 公式としても頻出する理論計算では、健全相2相の対地電圧が $\sqrt{3}$ 倍に上昇し、その健全相から大地へ流れ込む静電容量の充電電流が地絡点へと還流します。相電圧を $E$、線間電圧を $V$($= \sqrt{3}E$)、電源周波数を $f$(角周波数 $\omega = 2\pi f$)、電路1相あたりの対地静電容量を $C$ と置くと、1線地絡電流 計算式は以下のように導出されます。
$$I_g = 3\omega C E = \sqrt{3}\omega C V$$
この式が示す通り、非接地系統 地絡電流 計算の大きさは電源電圧と系統全体の対地静電容量の総和に比例します。インピーダンス接地系統や直接接地系統とは異なり、電源トランスの中性点ではなく「健全相の対地静電容量」が帰路となる点が、非接地系統における地絡現象の最大の物理的特徴です。
【実務と法規】電気設備技術基準の解釈とB種接地抵抗の計算方法
実務現場においてB種接地工事の抵抗値を設計する際は、理論式をそのまま使うのではなく、電気設備技術基準の解釈 地絡に関する規定(第17条および第24条)に準拠した計算を行います。高圧側電路と低圧側電路が混触した際、低圧側の対地電圧上昇を抑制して感電や火災を防ぐことがB種接地の目的です。
B種接地抵抗 計算方法の基本原則は、高圧電路の1線地絡電流 $I_g$ を基準として以下の計算式によって算出します。
$$R_B \le \frac{150}{I_g}\quad [\Omega]$$
ただし、電路に高圧地絡遮断装置を設置し、事故時に自動的に電路を遮断できる場合は、遮断時間に応じて許容値が緩和されます。
- 遮断装置なし(基本): $R_B \le \frac{150}{I_g}\ [\Omega]$
- 1秒を超え2秒以内に自動遮断: $R_B \le \frac{300}{I_g}\ [\Omega]$
- 1秒以内に自動遮断: $R_B \le \frac{600}{I_g}\ [\Omega]$
なお、計算によって得られた値が極端に大きくなる場合でも、内線規程 地絡保護基準および電技解釈により上限値が定められており、原則として $10\,\Omega$ 以下(緩和条件適用時でも実務上は $100\,\Omega$ 未満など系統条件による)の管理が求められます。安全マージンを考慮した接地設計が現場の標準となっています。
【ケーブル亘長の影響】対地静電容量と高圧ケーブルの選定一覧
近年、都市部や大規模工場だけでなく一般的なビル設備においても、構内配管の美観や信頼性向上のために架空線から高圧CVケーブルへの移行が進んでいます。ここで注意すべきは、対地静電容量 ケーブル亘長の増大に伴う地絡電流の急増です。
架空電線に比べ、金属遮へい層を持つ高圧ケーブルは導体とシールド間の距離が極めて近いため、対地静電容量が数十倍から数百倍に跳ね上がります。電技解釈第17条では、実測値が得られない場合の計算式として以下の標準算定式を規定しています。
$$I_g = 1 + \frac{\frac{V}{3}\times L - 100}{150} + \frac{\frac{V}{3}\times L' - 100}{2}\quad (\text{ケーブル線路は分子補正項を適用})$$
実務設計の参考として、代表的な6.6kV架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(高圧CV / CVTケーブル)の対地静電容量の目安を把握しておくことが重要です。
| ケーブル公称断面積 | 単心(CVT)対地静電容量目安 $[\mu\text{F/km}]$ | 3心(CV)対地静電容量目安 $[\mu\text{F/km}]$ | 1kmあたりの概算地絡電流 $[A]$ (6.6kV/50Hz) |
|---|---|---|---|
| $22\,\text{mm}^2$ | 約 0.25 | 約 0.23 | 約 0.90 |
| $38\,\text{mm}^2$ | 約 0.30 | 約 0.28 | 約 1.08 |
| $60\,\text{mm}^2$ | 約 0.35 | 約 0.33 | 約 1.26 |
| $100\,\text{mm}^2$ | 約 0.42 | 約 0.40 | 約 1.51 |
| $200\,\text{mm}^2$ | 約 0.55 | 約 0.51 | 約 1.98 |
このように、太いサイズのケーブルを長距離配線すると、それだけで数アンペア単位の地絡電流が常時流れる計算になります。これは高圧受電設備 地絡電流の整定計算において見逃せないファクターとなります。
【保護協調の肝】零相変流器(ZCT)の整定値と地絡方向継電器(DGR)の動作原理
地絡電流が大きくなると、他需要家の地絡事故によって自設備が誤遮断する「もらい事故(不要遮断)」のリスクが発生します。この現象を防ぎ、自構内の真の事故のみを選択遮断するために用いられるのが、地絡方向継電器 DGR 動作原理の核心です。
単純な過電流応答型の地絡継電器(GR)は零相変流器(ZCT)から検出した零相電流 $I_0$ の大きさだけで動作します。これに対し、DGRは零相電圧検出器(ZPD)から得られる零相電圧 $V_0$ と $I_0$ の「位相差」を常時監視します。
- 自構内事故の場合:事故点へ向かって電流が流れ込むため、零相電圧 $V_0$ に対して零相電流 $I_0$ の位相は進み(おおむね進み $45^\circ \sim 60^\circ$ 付近)となり、動作領域内に入るため確実に遮断します。
- 構外(電力会社側・隣傍)事故の場合:自構内の対地静電容量を充電するために逆方向の電流が流れるため、位相が遅れ(おおむね遅れ $90^\circ$ 方向)となり、不動作領域となって遮断をロックします。
実務における零相変流器 ZCT 整定値の決定では、一般的に動作電流を $0.2\,\text{A} \sim 0.4\,\text{A}$(200mA〜400mA)、動作時間を $0.1\,\text{秒} \sim 0.2\,\text{秒}$ 程度に設定します。構内の対地静電容量による充電電流が $0.1\,\text{A}$ を超える長大ケーブル設備では、単純なGRではなくDGRの設置が電力受電契約上も義務付けられます。
【実践演習】高圧受電設備の実務計算と電気主任技術者が押さえるべきステップ
自家用受電設備の新設や増設時、電気主任技術者 実務計算として実際に行う計算フローをステップ順に整理します。
【ステップ1:構内ケーブル亘長と対地静電容量の集計】
受電点からキュービクル、トランスまでの高圧ケーブルのサイズと長さを集計します。例えば、6.6kV CVT $60\,\text{mm}^2$ が総延長 $300\,\text{m}$($= 0.3\,\text{km}$)敷設されている場合、対地静電容量 $C_0$ は以下のようになります。
$$C_0 = 0.35\,\mu\text{F/km} \times 0.3\,\text{km} = 0.105\,\mu\text{F}$$
【ステップ2:構内対地静電容量による自端充電電流の計算】
周波数 50Hz の場合における自構内の充電電流 $I_{0c}$ は、
$$I_{0c} = \sqrt{3} \times 2\pi \times 50 \times (0.105 \times 10^{-6}) \times 6600 \approx 0.377\,\text{A}$$
自端充電電流が約 $377\,\text{mA}$ 流れるため、GRの感度電流 $200\,\text{mA}$ を超えており、外部事故で不要動作する危険性が明確になります。したがって、この現場ではDGRの選定が必須と判断できます。
【ステップ3:B種接地抵抗値の確認】
高圧受電用遮断器に 0.1秒動作の真空遮断器(VCB)を採用し、電力会社の配電系統全体の地絡電流最小値が $I_g = 15\,\text{A}$ であると提示された場合:
$$R_B = \frac{600}{15} = 40\,\Omega$$
これにより、目標接地抵抗値は $40\,\Omega$ 以下(実務上は余裕を見て $30\,\Omega$ 以下など)を設計値として接地極施工を発注します。
【地絡電流の計算】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:電技解釈の簡略計算式と理論式($I_g = 3\omega C E$)で値が異なるのはなぜですか?
A1:電技解釈の算定式(第17条別表)は、電線路の経年変化、絶縁体の誘電率のばらつき、がいしの汚れ、気象条件など現場の最悪条件を想定した「安全側の推定値」として係数が設定されているためです。一方、理論式は純粋な理想静電容量のみを対象とした物理計算です。官庁申請や接地設計の法規チェックでは電技解釈の数値を、継電器の位相特性設計や実測検証では理論式と実測データを用います。
Q2:太陽光発電設備や蓄電池を高圧連系する場合、地絡電流計算の注意点はありますか?
A2:系統連系インバータ(PCS)自体は一般的に非接地で連系されるため、定常的な地絡電流の供給源にはなりませんが、連系トランスの励磁容量や構内に張り巡らされる高圧連系ケーブルの対地静電容量が増加要因になります。特に大規模メガソーラーなど構内ケーブル長が数キロメートルに及ぶ施設では、自端充電電流だけで数アンペアに達し、DGRの正確な位相整定を行わないと連系遮断器が誤トリップする原因となります。
Q3:ZCTの貫通方向(電源側・負荷側)を間違えるとどうなりますか?
A3:ZCTの極性(K-L方向)を逆に接続すると、継電器に入力される零相電流の位相が $180^\circ$ 反転します。その結果、DGRは「構内事故を構外事故と誤認して遮断せず、構外事故を構内事故と誤認して不要トリップする」という極めて危険な逆動作状態に陥ります。施工後の受託検査や点検時には、位相試験器を用いた極性・位相特性試験の確実な実施が必須です。
まとめ:地絡電流計算のマスターが拓く安全な電気設備管理
地絡電流の計算は、単なる試験対策の計算問題にとどまらず、電気設備の保安実務において人身の安全と電力供給の信頼性を支える根幹の技術です。非接地系統のメカニズムを正しく把握し、ケーブル亘長に伴う静電容量の変化を計算に反映させることが、適切な機器選定と誤動作防止への第一歩となります。
電気設備の増設やケーブル更新が行われる現場では、必ず事前に地絡電流と自端充電電流の再計算を行い、保護協調とB種接地抵抗値の妥当性を検証する習慣を徹底してください。正確な計算理論と法規の理解こそが、事故のない堅牢な受配電システムを構築するための確かな基盤となります。 (出典: 地 絡 電流 計算(Yahoo!ニュース))