アローダイアグラムの書き方完全攻略!ダミー作業と最短工数の計算手順
プロジェクトの工程管理や基本情報技術者試験の頻出分野として知られるアローダイアグラムですが、「ダミー作業の引き方が分からない」「最早・最遅結合点時刻の計算でいつも迷ってしまう」と頭を抱える方は少なくありません。手順のルールさえ押さえれば、どんなに複雑に見えるネットワーク図であっても機械的に解き明かすことができます。
プロジェクトの遅延リスクを未然に防ぐ工程設計の現場から、応用情報技術者試験の午前対策まで、現場と試験の双方で役立つアローダイアグラムの書き方と計算テクニックを分かりやすく解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:アローダイアグラムは「結合点(丸)」と「作業(矢印)」で依存関係を可視化し、最短所要日数を導き出す手法。
- 要点2:つまずきやすい「ダミー作業」は、同じ結合点から出て同じ結合点に入る重複の回避と、前提条件の正確な伝達のために用いる。
- 要点3:最早結合点時刻は「前向きに最大値」、最遅結合点時刻は「後ろ向きに最小値」を選ぶ計算ルールを徹底すれば確実に解ける。
【基礎知識】アローダイアグラム(PERT手法)とは?日程計画で使われる理由
アローダイアグラムは、業務や開発プロジェクトにおける作業の順序関係や依存関係を有向グラフ(矢印)で表したものです。統計的手法を取り入れたPERT手法(Program Evaluation and Review Technique)による日程計画の中核として開発され、製造業からIT開発、建設現場まで幅広い分野で活用されています。
ガントチャートが「各作業のスケジュール期間」を視覚的に把握するのに適しているのに対し、アローダイアグラムは「どの作業が終わらなければ次の作業に着手できないか」という作業間の前後関係と全体の日程への影響を浮き彫りにします。そのため、実務におけるネットワーク工程表の書き方を学ぶ上でも欠かせない基礎スキルです。
図を構成する基本要素はシンプルに3つだけです。
- 作業(アクティビティ):時間やリソースを消費するタスク。実線の矢印(→)で表し、矢印の上や横に作業名と所要日数を記します。
- 結合点(イベント):作業の開始または完了の節目。円(○)で表し、内部に番号を記載します。
- ダミー作業:時間は消費しないが(所要時間0)、作業の順序関係だけを示す仮想タスク。破線の矢印(--->)で表現します。
【実践手順】アローダイアグラムの基本的な書き方と結合点番号の付け方
アローダイアグラムを一から描く際は、作業リストを整理した上で一定のルールに沿って結合点と矢印を配置していきます。図が破綻しないための鉄則を順に確認しましょう。
まずは所要工数の計算手順の土台となる、配置の基本ルールです。
- 時間の流れは左から右へ:矢印は原則として左から右(または上から下)へ向かって引き、逆流する矢印(ループ)を作ってはいけません。
- 1つの作業は2つの結合点を結ぶ:作業の開始点と終了点には必ず結合点が存在します。
- 合流と分岐の正確な表現:ある作業の完了が複数の次工程の開始条件になる場合は結合点から複数の矢印を分岐させ、複数の作業が揃わないと開始できない場合は1つの結合点へ合流させます。
描き終えたら、次に結合点番号の付け方に進みます。番号付けは「矢印の根本(始点)にある番号よりも、矢印の先端(終点)にある番号のほうが必ず大きくなる」ように、左端の開始結合点「1」から順に連続した整数を割り振ります。番号が大小逆転していると、後述する時刻計算のステップで参照順序が狂い、ミスを誘発する原因になります。
初心者が最もつまずく「ダミー作業のルール」と正しい描き方
アローダイアグラムの作図で最も多くの人が混乱するのがダミー作業のルールです。ダミー作業は所要日数が「0日」の架空の作業ですが、これが必要となる場面は主に2つのパターンに限定されます。
1つ目は、「同じ開始結合点から始まり、同じ終了結合点へ向かう並行作業が存在する場合」です。例えば、作業A(3日)と作業B(4日)が同時に始まり、双方が終わらなければ作業Cに進めないケースを考えます。このとき、結合点1から作業Aと作業Bの2本の矢印を直接同じ結合点2へ繋げてしまうと、「結合点1から2へ向かう作業」が一意に特定できなくなります。これを防ぐため、作業Bの終点に別の結合点3を設け、結合点3から結合点2へ破線のダミー作業を伸ばします。
2つ目は、「前提条件の一部のみを共有する場合」です。具体的には以下のケースです。
- 作業Xが完了したら作業Yを開始できる
- 作業Xと作業Zの両方が完了したら作業Wを開始できる
もし作業Xと作業Zを同じ結合点に合流させてしまうと、「作業Yを始めるためにも作業Zの完了が必要」という誤った制約が生まれてしまいます。これを正しく表現するには、作業Xの終了結合点から作業Wの開始結合点へ向けてダミー作業を引くことで、作業Yには作業Xのみを依存させ、作業WにはXとZの双方を依存させる状態を作り出します。
最早結合点時刻と最遅結合点時刻の計算手順|順方向・逆方向のルール
図が完成したら、プロジェクト全体の所要時間や各工程の猶予時間を算出するために、各結合点における2つの基準時刻を計算します。
結合点の円を上下(または左右)に分割し、上段に最早結合点時刻、下段に最遅結合点時刻を記入していくスタイルが一般的です。
| 指標名 | 意味 | 計算の向き | 合流・分岐時の選択ルール |
|---|---|---|---|
| 最早結合点時刻 | その結合点以降の作業を「最も早く開始できる時刻」 | 開始点から終了点へ(前向き計算) | 複数の経路が合流する場合、【最大値(Max)】を採用 |
| 最遅結合点時刻 | プロジェクト全体を遅らせないために「最も遅く完了しなければならない時刻」 | 終了点から開始点へ(後ろ向き計算) | 複数の経路が合流(逆走視点)する場合、【最小値(Min)】を採用 |
最早結合点時刻の計算では、開始結合点を「0」とし、各作業の所要日数を足しながら進めます。複数の作業が合流する結合点では「先行作業がすべて完了するまで次へ進めない」ため、計算結果のうち最も大きい値を書き込みます。
一方、最遅結合点時刻は、プロジェクトの最終完了日(終了結合点の最早結合点時刻と同じ値)からスタートし、作業の所要日数を引き算しながら逆方向に遡ります。逆走の過程で分岐がある(順方向では複数の矢印が出ている)結合点では、引き算した結果のうち最も小さい値を選びます。ここで大きい値を選んでしまうと、後の作業に遅延が発生してしまうためです。
この2つの時刻の差を求めることで、作業全体の遅れがプロジェクト完了に影響を与えない限界日数である全余裕日数(トータルフロート)を正確に把握できます。
クリティカルパスの求め方とプロジェクト遅延を防ぐ見極め術
最早結合点時刻と最遅結合点時刻が求まれば、プロジェクトマネジメントにおいて最優先で管理すべきクリティカルパスの求め方は明確になります。
クリティカルパスとは、開始から終了までの全経路の中で「所要時間の合計が最も長くなる経路」のことです。この経路上にある作業に1日でも遅延が生じると、プロジェクト全体の完了日数がそのまま1日延びてしまいます。
クリティカルパスを特定する条件は以下の通りです。
- 始点および終点の結合点において、最早結合点時刻と最遅結合点時刻が完全に一致していること
- その作業の所要日数が「終了結合点の最早時刻 - 開始結合点の最早時刻」と等しいこと
- 全余裕日数(トータルフロート)が「0」であること
アローダイアグラム上では、クリティカルパスを太線や二重線、あるいは赤色の矢印で強調して明示します。管理者はこのクリティカルパス上にある作業へ重点的に人員を投入し、進捗遅れを徹底して監視することが日程管理のセオリーです。
【試験対策】基本情報技術者試験の過去問から学ぶアローダイアグラム練習問題
国家試験である基本情報技術者試験 過去問や応用情報技術者試験 午前対策では、アローダイアグラムの読み取り・計算問題が定番として出題されます。よくあるパターンのアローダイアグラム 練習問題を通じて、解法の思考ステップを身につけましょう。
【例題】
以下の作業表に基づき、プロジェクト全体の最短完了日数とクリティカルパスを求めなさい。
- 作業A(所要日数: 3日、先行作業: なし)
- 作業B(所要日数: 2日、先行作業: なし)
- 作業C(所要日数: 4日、先行作業: A)
- 作業D(所要日数: 5日、先行作業: B)
- 作業E(所要日数: 3日、先行作業: A, B)
- 作業F(所要日数: 2日、先行作業: C, E)
【解法ステップ】
1. 依存関係とダミー作業の整理:
作業EはAとBの双方が先行作業です。作業Aの終了結合点から作業Eの開始結合点へ実線を引くと同時に、作業Bの終了結合点からも作業Eへ依存関係を渡す必要があります。作業Dは作業Bのみに依存するため、作業Bの終了結合点から作業Eの開始結合点へ破線のダミー作業(0日)を引きます。
2. 各経路の所要日数を比較:
開始から完了までのすべてのルートをリストアップして日数を足し合わせます。
- ルート1:作業A(3日) → 作業C(4日) → 作業F(2日) = 計9日
- ルート2:作業A(3日) → 作業E(3日) → 作業F(2日) = 計8日
- ルート3:作業B(2日) → ダミー(0日) → 作業E(3日) → 作業F(2日) = 計7日
- ルート4:作業B(2日) → 作業D(5日) = 計7日
3. 結論の導出:
最も日数がかかるルートは「ルート1(A → C → F)」であり、最短完了日数は9日、クリティカルパスは「A → C → F」となります。
試験本番では、図を丁寧に書き直す時間がない場合もあります。合流点に注目して「各作業の累計日数」をメモ書きしながら、前向き計算(最大値選択)で終了結合点の数字を素早く確定させるのが短時間で正解にたどり着くテクニックです。
【アローダイアグラムの書き方】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ダミー作業の矢印の向きはどう決めればいいですか?
A1:ダミー作業は「前提となっている側」から「その完了を待っている側」へ向けて引きます。作業Bが終わらないと作業Eが始められない関係であれば、Bの終了結合点からEの開始結合点へ向けて破線矢印を引いてください。
Q2:クリティカルパスが複数存在することはありますか?
A2:はい、複数存在することがあります。異なる複数の経路で計算した合計日数が偶然同じ最長値になった場合、そのすべての経路がクリティカルパスになります。この場合、いずれか1つの経路が遅れても全体日程が遅延するため、より厳格な進捗管理が求められます。
Q3:結合点時刻の計算で、なぜ最遅時刻は「最小値」を選ぶのですか?
A3:後ろ向き計算で大きい値を選んでしまうと、分岐先の別の作業が必要とする開始時刻に間に合わなくなるからです。一番余裕のない(開始が早い)作業日程に合わせる必要があるため、計算結果が最も小さくなる数値を採用します。
まとめ:アローダイアグラムをマスターして工程管理・試験を完全攻略
アローダイアグラムの作図や計算は、一見すると複雑なパズルのように思えますが、「矢印の依存関係の整理」「ダミー作業の2大原則」「最早・最遅の選択ルール(前向きは大、後ろ向きは小)」という3つの基本を体得してしまえば迷うことはありません。
手元の紙に実際の作業リストを書き出し、自力でアローダイアグラムを描いて結合点時刻を計算してみることが習得への最短ルートです。基本情報技術者試験などの資格対策はもちろん、実務における的確な日程計画やリスク管理の武器として、ぜひこの計算手法を役立ててください。 (出典: アロー ダイアグラム 書き方(Yahoo!ニュース))