聾唖者(ろうあしゃ)とは?差別用語とされる理由と現在の正しい呼び方

目次
聾唖者(ろうあしゃ)とは?差別用語とされる理由と現在の正しい呼び方
聾唖者(ろうあしゃ)とは?差別用語とされる理由と現在の正しい呼び方
@ creator • Click to Play Video Inline
🎵 聾唖者(ろうあしゃ)とは?差別用語とされる理由と現在の正しい呼び方

古い文献や映画、あるいは行政関連の古い資料などで「聾唖(ろうあ)」や「聾唖者」という言葉を目にしたことがある方は多いかもしれません。かつては耳が聞こえず、発話に困難を抱える人を指す公的な表現として広く用いられていました。しかし、テレビや新聞、Webメディアなどの公の場において、この言葉を見聞きする機会は原則としてなくなっています。

現在は「ろう者」や「聴覚障害者」という呼び方が標準となっていますが、なぜ「聾唖」という呼称が使われなくなったのでしょうか。言葉が持つ漢字の成り立ちや医学的・歴史的な背景を紐解くと、障害当事者の権利意識の変遷や、言葉が帯びてきた社会的ニュアンスが浮き彫りになります。言葉の正確な意味と「ろう者」「難聴者」「中途失聴者」との違い、さらには適切なコミュニケーション方法について事実を整理して解説します。

📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
  • 要点1:「聾唖(ろうあ)」は「耳が聞こえず話せない」を指す古い表現だが、「唖」に差別的な意味合いが含まれるため現在は公の場で原則使用されない。
  • 要点2:現在は医学・行政面では「聴覚障害者」、手話を第一言語とする当事者文化の文脈では「ろう者」と言い換えるのが一般的。
  • 要点3:一口に聞こえないといっても「ろう者」「難聴者」「中途失聴者」でアイデンティティや必要な配慮が異なり、相手に合わせた対話手段の選択が不可欠。

【言葉の起源と意味】「聾唖(ろうあ)」の読み方・漢字の成り立ち

「聾唖」の読み方は「ろうあ」であり、その対象となる人を「聾唖者(ろうあしゃ)」と呼びます。漢字を分解すると、それぞれの文字が持つ意味が明確になります。

「聾(ろう)」は耳に竜と書き、「耳が聞こえない状態」を指します。一方の「唖(あ)」は、口へんに亜と書き、「声が出せない・言葉を話せない状態」を意味しています。つまり、先天的または幼少期に聴覚を失ったことで音声言語の獲得が難しくなり、「聞こえず、話すことも困難である」という状態をそのまま並べて名付けられた複合語です。

明治期から昭和中期にかけては、医学用語や法規上の正式名称、あるいは「聾唖学校」といった教育機関の名称として公然と使われていました。当時は聴覚と発話の二重の困難を表す客観的な言葉として扱われていた歴史が存在します。

なぜ使われなくなった?「聾唖者」が差別用語・放送禁止とされる背景

かつて定着していた「聾唖」という言葉が忌避されるようになった最大の理由は、「唖(あ)」という漢字が持つ侮蔑的なニュアンスにあります。

古くから「唖」という言葉は「おし」とも読まれ、話すことができない人を見下したり、能力が劣っているかのように嘲笑したりする差別用語として使われてきた暗い歴史があります。また、音声言語を発しないだけであり、思考力や表現力に何ら問題がないにもかかわらず、「言葉を持たない愚か者」と結びつける偏見を生む温床となっていました。

1970年代以降、当事者団体による差別撤廃運動や人権意識の高まりを受け、マスメディアにおける自主規制の基準が強化されました。日本新聞協会や日本民間放送連盟などの用語ガイドラインにおいて、「聾唖」「唖」は放送禁止用語(放送自粛用語)に指定され、ニュース報道や出版物では原則として使用しない方針が確立されています。

さらに、手話言語の研究が進み「手話は音声言語と同等に高度で完全な言語である」という言語権の認識が広がったことも大きな契機となりました。「声を出さない=話せない(唖)」という定義そのものが、音声中心主義に基づいた偏見であると認識された結果、この言葉は過去の遺物となっていきました。

【違いを整理】「聾唖者」「ろう者」「聴覚障害者」「難聴者」の定義

聞こえに何らかの課題を抱える人々を指す言葉にはいくつかのバリエーションがあります。文脈や本人のアイデンティティによって使い分けられているため、それぞれの正確な違いを把握しておく必要があります。

呼称主な定義とニュアンス現在の使用状況
聾唖者(ろうあしゃ)耳が聞こえず、音声言語を話せない人を指す古い言葉。差別的表現として現在は使われない。
ろう者(ろうしゃ)主に手話を母語・第一言語とし、独自の言語・文化を共有する人々。当事者の文化的アイデンティティとして広く使用。
聴覚障害者医学的・行政的に聴覚機能に障害がある人の総称。公的文書、医療、報道等での標準的な言い換え語。
難聴者(なんちょうしゃ)聴力は低下しているが、補聴器や人工内耳を活用し音声言語で会話する人。医学・日常双方で広く使用。
中途失聴者音声言語を獲得した後に、病気や事故、加齢等で聴力を失った人。当事者区分として明確に区別して使用。

とりわけ重要なのが、「医学モデル」と「文化モデル」の視点の違いです。行政手続きや法律上の枠組みでは「聴覚障害者」という客観的な総称が使われます。一方で、手話を使い独自の価値観や生活様式を持つ人々は、自らを「障害者」という欠損の枠組みではなく、「手話という固有の言語を話す言語的少数派(ろう者)」として捉える傾向が強まっています。

全日本ろうあ連盟の名称と「ろう文化」の歴史・手話の発展

現在では忌避される「ろうあ」という言葉ですが、国内最大の当事者団体である一般財団法人全日本ろうあ連盟の名称には、いまも「ろうあ」の文字が残されています。これには組織の設立と運動の歴史が深く関係しています。

全日本ろうあ連盟は1947年(昭和22年)に結成されました。戦後の混乱期において、聞こえない人々の権利獲得、教育の普及、就労差別撤廃を求めて立ち上がった当事者たちの歴史的なアイデンティティとして、ひらがな表記の「ろうあ」を団体の看板として継承し続けています。差別用語としての「聾唖」を排斥しつつも、長年積み上げてきた運動の歴史的文脈として大切に保持されている形です。

日本のろう教育を担ってきた「聾学校(現在は特別支援学校(聴覚障害)への移行も進む)」の歴史も平坦ではありませんでした。かつては口の動きを読み取って発声させる「口話法」が絶対視され、学校現場で手話の使用が厳しく禁止・処罰された時代が長く続きました。

しかし、当事者たちが密かに、かつ強固に受け継いできた手話は、日本語とは異なる独自の文法構造を持つ完全な言語(日本手話)であることが言語学的に証明されました。手話を通じて育まれる豊かな「ろう文化」は、単なる福祉の枠を超えて、多様性を尊重する社会の重要基盤として評価されています。

聴覚障害者のコミュニケーション方法|手話・筆談・要約筆記・最新ITツール

聴覚に障害がある人と円滑に対話を行うためには、本人の特性に応じた適切なコミュニケーション手段を選ぶ姿勢が欠かせません。「聞こえない人=全員が手話を話せる」という思い込みは禁物です。

代表的な対話方法は以下の通りです。

  • 手話(日本手話/日本語対応手話):ろう者を中心に使われる視覚言語。手の動きだけでなく、表情や眉の動き(非手指標識)が文法的な意味を持ちます。
  • 筆談・空書:紙とペン、あるいはタブレット端末に文字を書いて伝える手法。難聴者や中途失聴者、手話を習得していない人との対話で極めて確実です。手のひらや空中に文字を書く「空書」も短文のやり取りに役立ちます。
  • 口話(読唇術):相手の口の形や表情から話の内容を読み取る方法。ただし、同音異義語の判別が難しく、読み取れる割合には限界があるため過度な依存は禁物です。
  • 要約筆記(パソコン要約筆記):講演会や会議などの音声を、要約筆記者がリアルタイムで文字化してスクリーン等に投影する支援手法。
  • 音声認識アプリ・AI文字起こしツール:話した音声を即座にテキスト化するスマートフォンアプリ(UDトークなど)やAIリアルタイム字幕ツール。日常生活や職場での情報保障ツールとして定着しています。

対話において最も大切なのは、「手話ができないから」と身構えることではなく、身振りやスマートフォンのメモ画面を見せるなど、相手が最も理解しやすい手段を確認しながら柔軟に対応することです。

【聾唖者とは】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:日常生活で「聾唖者」という言葉を使うと失礼にあたりますか?
A1:はい、失礼にあたる可能性が極めて高いため使うべきではありません。「唖」という文字に強い侮蔑のニュアンスが含まれているためです。通常は「聴覚障害のある方」「耳が不自由な方」、手話を第一言語としているコミュニティでは「ろう者の方」と呼ぶのが適切です。

Q2:手話通訳者と要約筆記者は何が違うのですか?
A2:手話通訳者は音声を「手話(視覚言語)」に翻訳する専門職であり、主に手話を母語とするろう者を支援します。一方の要約筆記者は、音声をリアルタイムに「文字(日本語テキスト)」として要約表示する専門職であり、主に中途失聴者や難聴者を支援します。

Q3:耳が聞こえない人に話しかける際、最初に注意すべきマナーはありますか?
A3:突然背後から触れたり大声を出したりせず、相手の視野に入る位置から軽く手を振る、あるいは肩をトントンと優しく叩いて合図を送ります。対話時は口元を隠さず、相手の顔をしっかり見て、はっきりとした表情でコミュニケーションを取ることが大切です。

まとめ:言葉の歴史を知り、多様な聞こえと対話に向き合う

「聾唖者」という言葉が過去のものとなり、「ろう者」「聴覚障害者」へと呼び方が変わってきた背景には、当事者の尊厳を守り、手話を完全な言語として認めてきた歴史的な前進があります。

聞こえの状態やコミュニケーションの手段は、生まれつき耳が聞こえない人、人生の途中で聞こえなくなった人、加齢によって聞き取りづらくなった人など、一人ひとり全く異なります。過去の言葉の成り立ちと背景にある意味を正しく理解した上で、目の前にいる相手に寄り添ったコミュニケーションを実践していく姿勢が求められています。 (出典: 聾唖 者 とは(Yahoo!ニュース))

聾唖 者 とは
聾唖 者 とは
聾唖 者 とは